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意 見 陳 述 書
事件名 平成16年(行ウ)第68号
「公金支出差止等請求事件」
千葉地方裁判所 御中
2006年2月17日 千葉県佐倉市新臼井田18−11 入江 晶子
2004年11月29日、私たち原告は千葉県に対し八ッ場ダム建設事業に伴う県の負担金の支出等は違法であるとして、今後の費用負担の差し止めと過去1年分の支出金の返済を求め、千葉地方裁判所に提訴しました。
千葉県の本件事業の負担金は国庫補助金を除くと328億円であり、そのうち利水負担金が153億円、治水負担金が175億円です。その他負担金を合せると総額383億円となりますが、すでに提訴時まで130億円支出され、今後250億円もの税投入が予定されています。県内では本事業に北千葉広域水道企業団と印旛郡市広域市町村圏事務組合も参画しており、その費用負担はそれぞれ45億円と77億円となります。私が住んでいる佐倉市は後者の構成自治体の1つであるため、住民には二重の負担が課せられる上、巨額の国費投入で三重の負担を強いられています。
私たちは本件事業が必要性を失っているという認識から、千葉県が地方自治法2条14項にある「最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」また、地方財政法4条1項の「目的を達成するための必要かつ最小の限度をこえて、これを支出してはならない」という条項等に違反していると主張してきました。一方、県は必要性ありとしながらも、国の直轄事業であるためか、独自に再検証を行なっているとは認められません。昨年、県水道局が国庫補助金に係わって再評価を行ないましたが、その手法には問題があり、結論ありきの現状追認に留まっています。厳しい財政状況や地方分権の観点からも国の方針に唯々諾々とする従来型の行政運営が果たして許されるのか、県民から厳しく問われていることを真摯に受け止めるべきと考えます。
本日提出した原告第3準備書面では、治水面での不必要性を説明し、千葉県が河川法上の受益者としてその負担金を支出することの違法性を主張しています。法廷ではその内容について映像を用いて概要説明させていただき、裁判所のご判断をお願いするものです。
1級河川である利根川の管理に関する費用は河川法第59条の規定により、原則として国が負担することになっています。しかし、その管理によって生じる利益は都府県にも帰するため、河川法第63条に基づき、受益者として千葉県にも費用負担が求められています。同条項では「著しく利益を受ける場合においては、国土交通大臣はその受益の限度において、負担させることができる」と規定されています。しかし、八ッ場ダム事業が千葉県の治水に全く役立たないことは明らかであり、「著しい利益」を受けることはありません。従って、県には治水の費用負担をする法的根拠がないため、負担金支出は違法であると主張します。
以上
第5回口頭弁論 治水準備書面に関する意見陳述シナリオ
- 表紙 八ッ場ダムはいらない
@ 本日提出した原告第3準備書面は、治水に関する内容となっています。原告の主な主張は、以下の2点です。
A 第1にきわめて過大な洪水流量を想定した利根川の治水計画は現実性がなく、破綻しているということ。第2にカスリーン台風が再来した場合の八ッ場ダムの治水効果はゼロであるということ。
B 従って、千葉県が治水上、八ッ場ダム事業によって「著しい利益」を受けることはないことから、負担金の支出は違法であり、その概要について、陳述させていただきます。
- 千葉県の負担額
@ 千葉県の総負担額ですが、国庫補助金を除く治水、利水、その他を合せ、383億円となっています。
A そのうち治水負担金は175億円となります。
- 河川法63条
@ では、なぜ千葉県が治水費用の負担を求められているのかという点です。
A 利根川は1級河川なので、その管理に関する費用は国が負担するのが原則とされています。
B しかし、その管理によって生じる利益は都府県にも帰するとされていることから、千葉県にも費用負担が求められています。
C その法的根拠となるのが、河川法の63条です。この63条では、「都府県が著しい利益を受ける場合においては、国土交通大臣はその受益の限度において、負担させることができる」と規定されています。
D しかし、この八ッ場ダム事業が千葉県の治水にとって、全く役に立たないことは明らかです。千葉県が「著しい利益」を受けることはありません。
E その理由として、八ッ場ダムが治水上必要であるとしている利根川の治水計画は実現不可能な内容となっているためです。どのような点が現実的でないか、説明いたします。
F 利根川の治水計画は、未曾有の被害をもたらした1947年(昭和22年)のカスリーン台風の洪水をベースに作られています。
- 利根川治水計画の基準点八斗島の場所
@ ここが利根川治水計画の基準点である伊勢崎市の八斗島です。
A この八斗島地点で200年に1回の洪水に対し、最大洪水流量が、毎秒22,000トンに設定されています。国は昭和55年、この流量を17,000トンから突然22,000トンに引き上げ、計画の全面改訂を行ないました。
B 次の図をご覧下さい。
- 利根川の八斗島地点の治水計画
@ この22,000トンのうち、16,000トンは下流の河川改修で対応し、残りの6,000トンを上流につくるダム群によって、洪水調節することになっています。
A 現在、上流にはすでに6つのダムがありますが、それで対応できるのは毎秒1,000トンです。6,000トンの洪水流量をカットしなければなりませんが、そのうちの17%にしかあたりません。
B 八ッ場ダムによって600トンカットするとしても、合わせて1,600トンにしかならず、必要な調節量の27%にしかなりません。
C 残り73%の毎秒4,400トンは今後、建設するダム群で調節することになっています。
D そして、そのためには、20基近くのダムが必要となります。
E しかし、今後、新規のダム建設が行なわれるのかというと、それは到底不可能であると言わざるを得ません。
- 中止になったダム計画
@ その理由として、利根川上流では2000年から4つのダム計画が相次いで中止されています。
A 水需要の増加がストップして、利水予定者がダム計画から撤退したためです。
B このことからも、ダムの治水目的が極めて軽いことが分かります。
C ですから、計画上必要とされる新規のダム建設は、実際、無理であるといえます。
- 利根川放水路の図
@ 次に、利根川治水計画の非現実性を示すものとして、利根川放水路を取り上げます。
A こちらの布川狭さく部から千葉ニュータウン、花見川を経て、東京湾に毎秒3,000トンを流す計画となっています。
- 利根川放水路の説明(1)
@ 事業費は2兆円ともいわれていますが、現在、予定ルートの大半は住宅密集地となっています。
A 川幅およそ300メートル、延長32キロメートルの用地買収はどう考えても不可能です。
- 利根川放水路の説明(2)
@利根川放水路によって、毎秒3,000トンもの水が流されるのであれば、100キロ以上も上流に位置する八ッ場ダムで毎秒600トンカットしても、千葉県の治水にとって全く影響はありません。
- 毎秒22,000トンの大洪水が来るのか
@ 次の問題点として、利根川治水計画の基本高水流量である毎秒22,000トンがいかに過大で現実性のない数字か、検証したいと思います。
A このような大洪水が本当にくるのか、という点です。
B 国土交通省は、カスリーン台風の時、八斗島地点の洪水流量は毎秒17,000トンと発表しています。
C しかし、この17,000トンは当時の観測結果から得られたものではなく推測値であり、実際は15,000トン程度と思われます。
D 次のグラフをご覧下さい。
- 利根川・八斗島地点での年間洪水流量グラフ
@ これまでの洪水の中でカスリーン台風の時の流量が突出して多いことがわかります。
A それ以降は、1949年のキティ台風を除き、10,000トンを超えたことはありません。
B カスリーン台風が来た昭和20年代は、戦時中の森林の乱伐によって、利根川流域の山の保水力は著しく低下していました。
C そのような特殊な事情によって、洪水流量が多くなったと思われます。
D 次の図は、国土交通省のデータに基づいて、八斗島上流域の平均3日雨量と八斗島の洪水流量の関係を示したものです。
- 八斗島上流域の平均3日雨量とピーク流量の図
@ 黒丸の横の数字は西暦を示しています。これを見ると、カスリーン台風の時、上流域の平均3日雨量は330ミリ程度で、八斗島の最大流量は17,000トンとなっています。
A このグラフでは、雨量と最大流量にほぼ直線的な相関関係が見られます。
B しかし、この22,000トンという流量は、この直線からはずれており、飛びぬけて大きなものとなっています。
C 従って、この22,000トンの洪水流量は、明らかに過大な数値であることが分かります。それを導き出した国の洪水流量の計算方法そのものに重大な欠陥があるといわざるを得ません。
D 81年の洪水を見ると、平均雨量230ミリ程度でピーク流量は8,000トンと少なくなっています。このことからも上流の森林整備が進み、山の保水力が格段に向上した結果、河川への流出が減少していることが分かります。
- 河川改修を計画通りに進めれば、カスリーン台風並みの洪水への対応が可能
@ 一方、ダムではなく河川改修での対応はどのようになっているのでしょうか。
A 結論から言えば、計画通りに河川改修を行うことで、毎秒16,000トンの洪水流量がカットできれば、カスリーン台風並みの洪水へ対応で
きると考えられます。
B 実際、利根川中流部の栗橋付近で毎秒14,000トン程度、八斗島付近では16,000トン以上の流下能力が既に確保されています。これは、ほかでもない国土交通省の計算で明らかとなっています。
- 氾濫予想図
@ 次に2点目の主張ですが、国土交通省のデータと計算によっても、カスリーン台風が再来した場合、八ッ場ダムの治水効果はゼロとされている点についてです。
A それにもかかわらず、国土交通省は、八ッ場ダム計画の資料で「現状でカスリーン台風が再来し、利根川が破堤すれば、210万人に30兆円の被害が生じる」と説明しています。
B これは大変欺瞞に満ちたものといわざるを得ません。
C 次のグラフをご覧下さい 。
- カスリーン台風の時に八ッ場ダムがあっても八斗島地点の治水効果はゼロ
@ このグラフは国土交通省のデータと計算によって、カスリーン台風が再来した時の洪水流量の計算を示したものです。
A ダムがない場合がみどりの線で、ピーク流量が毎秒22,000トンとなっています。
B 既設6ダムがある場合が青の線がこちらで、ピーク流量が20,000トンを少し超える程度になっています。
C これに対し、八ッ場ダムによる洪水流量の削減が加わった場合が赤の線になります。このことから八ッ場ダムは洪水のピーク時には全く削減効果がないことが分かります。
D では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
- 治水効果はゼロ、原因
@ 原因の1点目として、カスリーン台風の時には吾妻川上流の雨量が少なかったこと、2点目として、吾妻川上流の降雨の時刻が約9時間程度早かったことが考えられます。
A このことは、ダムのもつ治水効果の不確実さ、そして限界を具体的に示しています。
B 次の図は、カスリーン台風の雨量の分布図です。
- カスリーン台風の降雨図
@ 八ッ場ダムが位置する吾妻川上流では、雨量が少なくなっています。これは、地理的条件によるものと考えられます。
A 南からくる台風の雨雲が榛名山と赤城山にぶつかって大雨を降らせることが多く、その結果、吾妻川上流には大雨が降らないことが多くあります。
B 次のグラフは、八ッ場ダムをつくることによって、洪水時、どの程度の治水効果があるかを示したものです。
- 八斗島地点に対する八ッ場ダムの治水効果
@ 戦後の3大洪水といわれるもののうち、最大規模のカスリーン台風に対しては、効果がゼロ、1949年のキティ台風に対しても毎秒200トン少々、1958年の台風21号に対しても、毎秒160トン程度の削減効果しかなかったという計算結果がでています。
A このことからも、八ッ場ダムは大きな洪水に対して、ピーク流量をカットする効果が非常に少ないことがわかります。つまり、洪水軽減に役立たないダムであるといえます。
- 治水面でも八ッ場ダムは必要性ない
@ 以上、八ッ場ダムが千葉県の治水において、いかに役に立たない無益な事業であるか、陳述させていただきました。
A 千葉県においては、財政難にもかかわらず、本事業の必要性についてきちんとした検証も行なってきていません。また、地方分権の観点からも国の方針に唯々諾々とする従来型の行政運営が果たして許されるのか、県民から厳しく問われていることを真摯に受け止めるべきと考えます。
B 治水上も著しい利益を受けることがない八ッ場ダム事業に巨額の負担金を支出することに、法的根拠が全くないことからも違法であると重ねて主張し、陳述を終わります。
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